インフルエンサーの PR 投稿を、自社のホームページ・自社の SNS・広告・店頭のポスターにも使う事を「二次利用」と言います。投稿された後に「使ってもいいですか」と聞くと、話がこじれたり、追加の費用がかかったりします。この記事では、頼む前に決める事と、法律で気をつける事を説明します。
写真と動画の権利はインフルエンサーにある
著作権法では、写真や動画などの著作物を作った人が著作者で、著作者は著作権を持ちます(第 2 条・第 17 条)。登録などの手続きは要りません。PR 投稿の写真や動画は、撮ったインフルエンサーの物です。
お店・会社が報酬を払っていても、それだけでは権利は移りません。著作権法では、利用の許諾を得た人は、許諾された利用方法と条件の範囲内でだけ使えると定めています(第 63 条 2 項)。「SNS に投稿してもらう」事だけを頼んだ場合、投稿をホームページや広告に使う事は、その範囲に入っていません。
「使わせてもらう」か「譲ってもらう」か
二次利用の決め方には、大きく 2 つの形があります。
| 形 | 中身 | 著作権法の条文 |
|---|---|---|
| 利用の許諾 | 権利はインフルエンサーに残したまま、決めた範囲で使わせてもらう | 第 63 条 |
| 著作権の譲渡 | 著作権の全部または一部を、お店・会社に移す | 第 61 条 |
譲渡の場合、著作権法では、翻案(作り変え)などに関する第 27 条・第 28 条の権利は、契約で名指ししていないと譲った側に残ると推定されます(第 61 条 2 項)。文化庁の「著作権テキスト」でも、これらを含めて譲り受ける時は、契約書に「すべての著作権(著作権法第 27 条及び第 28 条の権利を含む)を譲渡する」と書いておく必要があるとされています。
また、著作者人格権(勝手に改変されない権利・名前を出すかを決める権利など)は、著作者本人だけの物で譲渡できません(第 59 条)。文化庁のテキストでは、人格権を行使しない旨を定める例もあるが、著作者の側には改変されても異議を言えないなどの不利益が生じるので注意が必要、と書かれています。
どちらの形にするかは、使い方によります。期間を決めて自社のホームページと SNS に載せるだけなら、範囲を決めた許諾で足りる事が多く、譲渡より頼みやすくなります。
個人に頼む時は範囲と対価を文章で示す
公正取引委員会のフリーランス法の Q&A では、成果物の権利の譲渡や許諾を受けたい場合は、業務委託の時に「給付の内容」の一部として、譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要があるとされています。あわせて、その対価を報酬に加える必要があり、権利がインフルエンサーにあるのに対価を払わずに二次利用をすると、「不当な経済上の利益の提供要請」として問題になるおそれがあるとされています。
つまり、二次利用は「お願いすれば無料でできる物」ではなく、範囲を決めて、報酬に含めて、文章で残す物です。値段が上下する要素は「インフルエンサーに PR を頼む相場」にまとめています。
自社に載せる時も「PR 投稿」と分かる形にする
消費者庁のステマ規制の Q&A では、依頼した(広告に当たる)インフルエンサーの投稿を抜粋して、「お客様の声」として自社のホームページに載せる事は適当ではないとされています。「お客様の声」は、ふつう自主的な感想と受け取られるためです。載せる場合は、自社が依頼したインフルエンサーの投稿である事が、見た人に明瞭に分かる形にする必要があるとされています。
二次利用の先でも、「PR 投稿」「〇〇さん(依頼した投稿)」のように、依頼した投稿だと分かる書き方にします。
写っている人の肖像にも気をつける
写真や動画にインフルエンサー本人やほかの人が写っている場合は、著作権とは別に、肖像の問題があります。文化庁のテキストでは、肖像権は法律で定めた物ではなく判例で確立した権利と説明されています。最高裁判所の判決(2005 年 11 月 10 日)では、人はみだりに自分の容ぼう・姿態を撮影されない事について法律上保護される人格的利益を持つとされています。
本人が写った投稿を広告に使う場合は、本人の了承を取ります。ほかのお客様が写っている物は、二次利用の対象から外します。
頼む前に決める事と例文
| 決める事 | 例 |
|---|---|
| 使う場所 | 自社のホームページ・自社の SNS・ネット広告・店頭のポスター |
| 期間 | 投稿から 1 年間 |
| 加工の可否 | 切り抜き・文字入れをするか。する場合は事前に見せるか |
| 名前の表示 | 投稿者の名前(アカウント名)を載せるか |
| 対価 | 二次利用の分を報酬に含める(例: 投稿 15,000 円 + 二次利用 5,000 円) |
依頼の文には、次のように書きます。
投稿していただいた写真と動画は、投稿から 1 年間、当店のホームページと Instagram にも載せたいと考えています(広告には使いません)。切り抜き以外の加工はせず、アカウント名を添えて「PR 投稿」と分かる形で載せます。この分として 5,000 円を報酬に含めています。
まとめ
- PR 投稿の写真と動画の権利はインフルエンサーにある。頼んだ範囲の外で使うには、許諾か譲渡が要る
- 使う場所・期間・加工・名前の表示・対価を、頼む前に文章で決める。個人に頼む時はフリーランス法で明示が求められる
- 自社に載せる時も「依頼した投稿」と分かる形にし、写っている人の了承を取る
出典
- e-Gov 法令検索「著作権法」第 2 条・第 17 条・第 59 条・第 61 条・第 63 条 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
- 文化庁「著作権テキスト 令和 8 年度版」(契約の章・肖像権の項) https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/94383901_01.pdf
- 公正取引委員会「フリーランス法 Q&A」Q81 https://www.jftc.go.jp/fllaw_limited/fllaw_qa.html
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関する Q&A」Q16 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/
- 裁判所「最高裁判所第一小法廷 平成 17 年 11 月 10 日判決(平成 15 年(受)第 281 号)」 https://www.courts.go.jp/hanrei/52388/detail2/index.html



